平成24年12月号

さんぽみち12月号もくじ

・創春館、療養棟特集
・今月の事業所便り
・院長先生の健康豆知識
・吾輩はジータである
・リハビリ便り
・行事予定
・文芸作品
・編集後記

 

創春館・療養棟特集

療養棟2階 腕相撲大会

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療養棟2階では先月の28日に誕生日会を行いました。毎月の恒例のイベントです。今回は5名の方々が誕生日を迎えられ、バースデイカードのプレゼント、また全員による『ハッピーバースディ』の大合唱のプレゼントがあり、その後、職員同士による腕相撲大会で楽しんでいただきました。腕相撲大会は、以前、ある利用者様から「職員さんは沢山いるけれども、誰が一番腕っ節がいいんだい?」という質問をいただいたことが、きっかけとなりました。職員達は、いいところを見せようと、ここぞとばかりに本気を出し、真剣勝負が行われました。中には本気を出しすぎて、おならが出てしまった職員もいました。(とんでもない奴だ!)

そんな白熱した勝負を見て、利用者様から参加したいとの声が聞かれ、対戦相手には院長先生を指名し、急遽特別マッチが開催されました。参加された利用者様は若い頃から農業に励まれ、年は老いても、その鍛え上げられた肉体は衰えを知らないようでした。勝負は拮抗しましたが、わずかな隙をつき利用者様が勝利を収めました。

今回勝負に負けた者には、パイ投げ地獄の×ゲームが行なわれました。パイが投げられる度に、歓声が起きていました。パイ投げを今までご覧になったことのない方からは「あれは、美味しいのかい?」との質問が出されていました。

イベントが終わってからは「また真剣勝負を見せておくれ!」という声が多く聞かれています。また体を鍛え上げ、大会をやろうと考えています。

 

療養棟3階 ホットケーキ作り

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療養棟3階では、11月22日におやつ作りとしてホットケーキ作りを行いました。生地を混ぜ合わせホットプレートで焼く作業を利用者様と行いました。ホットケーキを焼く際には「何回かは作ったことあるよ」や「ケーキなんて作るのは、初めてだからどう作ればいいかわからないよ」など会話がはずみました。完成したホットケーキにクリームとメープルシロップを飾り付ける時も、先にクリームを舐めてしまう方や、「早く食べたいよ」という方もおり、ホットケーキは好評で、「美味しい」「また作りましょうね」と笑顔で召し上がっていらっしゃいました。これからも利用者様が楽しんでいただけるようなイベントを開催していきたいと思います。

 

今月の事業所便り

クリニック通所リハビリ
「ラクナ―ル(体幹装具メディカルバンド)」を導入しました。

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クリニック通所リハビリでは、腰痛予防と、座っている時の姿勢の改善に「ラクナール」という、腰痛予防のバンドを導入しました。椅子に座り、腰から両膝に装着すると、背筋が伸びて良い姿勢を保つことで、腰痛を軽減させてくれる、というものです。

「ラクナール」は、今年の国際福祉機器展に出展されていて、無料体験で使用した後、メーカーから無償提供していただきました。現在、座った時に良い姿勢を保つことが難しい方や、腰痛がある方にご利用いただき、食事の際の座位姿勢の保持や、机上作業中の姿勢の改善に役立っています。腰痛の原因は人それぞれ違い、全ての方に効果があるというものではありませんが、姿勢を改善し腰痛を予防することで、少しでも楽に日常生活を送ることができればと考えています。

 

創春館通所リハビリ
色鮮やかな紅葉ドライブ

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11月の5日間、紅葉ドライブに出掛けました。最初の2日間は嶺公園へ、残りの3日間は前橋渋川バイパスを通り、敷島公園~県庁というコースでした。時期が遅かった事もあり、もみじの葉は散り始めていましたが、赤や黄色に彩られた木々は、決して絵具では表せないグラデーションで、利用者様は感嘆の声をあげておられました。毎年のルート、嶺公園ではもみじの紅色に色づいた葉に目を奪われ、また、新しいルートとして選んだ敷島公園では、イチョウの黄色の葉に心癒されました。どちらにも趣があり、秋の風情を満喫できました。紅葉と一緒に、いつもと違う笑顔をバッチリとカメラにおさめることができました。晩秋にしか味わえない、しっとりとした「芸術の秋」に利用者様、スタッフ共々にひたることのできた5日間でした。

 

わきあいあい 秋恒例の運動会

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わきあいあいでは11月8日と9日に秋恒例の運動会を行ないました。職員、ご利用者共に仮装をし、パン食い競争やチーム対抗での風船バレーを楽しみました。そして、16日は利用者様の98歳のお誕生日会を行ないました。職員が用意した赤いちゃんちゃんこを着ていただき、全員でハッピーバースデイの合唱のプレゼント。ケーキのかわりにおまんじゅうをを召し上がり、全員で記念撮影を行ないました。

 

ケアセンター朱咲 今月はイベント盛りだくさん

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今月の朱咲はイベント盛りだくさんの月となりました。まず始めに『焼いも大会!!』寒い中のホクホクの焼いもに、みなさん大変喜ばれていました。その次は『誕生日会』。主役の利用者様がプロにお化粧していただきました。普段控えめな方ですが、「おしゃれしていくの!」と嬉しそうにみなさんの前で披露していました。そしてゲストの手品師!!新米ですが、みなさん温かい目で見守って下さいました。今後も利用者様に喜んでいただけるよう、様々な取り組みをしていきます。

 

GHゆめさき
成果を発揮して・・・

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グループホームゆめさきでは、11月4日にケアセンター朱咲と合同運動会を行いました。混合チームという事で、最初は皆さん緊張されていましたが、いざ競技が始まると、いつの間にか緊張もとけ、応援し合い練習の成果を発揮されていらっしゃいました。

また、今回はご家族にも参加、協力いただき、スムーズに競技を進められ、楽しく行う事が出来ました。帰り際には、「また、会いましょう」などの声も聞かれ、良い交流が出来た運動会となりました。これからも、楽しく参加してもらえる企画を考えていきたいです。

 

星辰の家 紅葉ドライブ

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星辰の家では、11月5~11日にかけ、紅葉が丁度見頃なので、ドライブで赤城山 木の家・嶺公園・伊香保河鹿橋へ行きました。赤城山木の家ではお茶をし、紅葉を眺め「綺麗だね」等を話され、利用者様は大変喜ばれていました。河鹿橋に行かれた方々は、橋の方まで歩いていただきリハビリにもなったと思います。

普段ドライブへ行かれない利用者様達も、紅葉を見に行き、良い気分転換になったと思います。これからも利用者様が望む行事をして行きたいと思います。

しらさぎ
リンゴ狩りドライブとアップルパイ

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グループホームしらさぎでは、91歳になられたお2人の利用者様の合同お誕生日会を、10日に行いました。みんなにお祝いをされて、2人ともとても感激され、涙を流す一幕もあり、とても良いお誕生日会となりました。また21日には渋川の赤城町にある「キミちゃんリンゴ園」に行ってきました。しらさぎでは、初めてのリンゴ狩りと言う事もあり、利用者様も(職員も)楽しみにしていて、美味しそうなリンゴが実った木々を見て、「たくさんリンゴがあるねぇ!」と目を輝かせていました。皆さん試食の林檎を、シャキシャキと良い音を立てて「もっとちょうだい。」とたくさん召し上がっていました。その帰りには子持の方まで足をのばして、「こもち庵」で美味しいお蕎麦をいただいてきました。リンゴにお蕎麦と、美味しいものを満喫した秋のドライブとなりました。また後日、リンゴ狩りで購入したリンゴを使って、みんなでアップルパイを手作りし、リンゴ狩り以上に美味しく召し上がっていました。これからも楽しいイベントに出来たらと思います。

 

伊香保ケアセンター明月
待ってました!明月冬の寄せ鍋パーティー!

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さて、明月では11月28日に冬の寄せ鍋パーティーを行いました。皆さん野菜切りから参加して下さり、白菜、椎茸、人参・・・と盛り沢山の野菜を切って下さいました。お疲れ様です!次は盛り付け。「こんな豪華なの食べたこと無いよ!」と言われながら、肉団子、鶏モモ肉、鮭、ハマグリとドンドン盛り、最後に職員による「鍋にまつわる小話」を聞きながら煮立つのを待ちました。おいしく出来た寄せ鍋に、皆さん大満足でした。

 

涼風の家 すし処すずかぜ 開店しました

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へい、らっしゃい!涼風の家では、入居者の皆様が大好きなお寿司を手作りして、パーティを行いました。今回は、まぐろ・いか・えび・サーモン・ほたて・甘えび・ねぎとろ・いくら・うに・玉子・納豆の十一種類のネタに、ガリも用意しておすし屋さんの雰囲気たっぷり。普段食が進まない方も、お寿司だとどんどん召し上がってくださいました。秋もだいぶ深まってきましたが、涼風の皆様は、まだまだ食欲の秋真っ盛りです。

 

あかしあの里Ⅲ 初めて作るいもきんつば

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11月29日にあかしあの里Ⅲでは、手作りおやつで「いもきんつば」を作りました。皆初めて作るので、スタッフのお手本を真剣な眼差しで見つめます。それから恐る恐る芋のかたまりに、白玉粉の液をつけホットプレートで焼き始めました。だんだんと焼けていい香りがしてくるにつけ、皆さんの表情もゆるみ「うまそうだな。」「売っているきんつばみたいね。」と期待がふくらみます。お茶と共にいただくと「上品な味だね。」「もう一つ食べたいわ。」と大好評でした。次回も皆さんに喜んでいただける手作りおやつを考え、提供していきたいです。

 

DSゆめさき 恒例の紅葉狩り

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今年も恒例の紅葉狩りに11月5日、7日に赤城「木の家」へ行ってきました。6日も行きましたが雨が降ってきたので希望者のみ午後行きました。今年はそこで昼食を食べてゆっくり過ごしていただこうと思い、厨房に無理をお願いして実現しました。登って行った途中、紅葉の色が鮮やかに彩っており、車中では「赤、黄色、緑と彩っていて綺麗だよー。なかなか見られない風景で、連れてきてくれてありがとね」と特に女性の言葉が聞かれていました。木の家で昼食を皆様と職員で食べ、「こういうところで皆で食べると味が変わってくるねー、美味しいよ」と笑顔で満足の声が聴かれていました。そして「また来年も来ようね。」と皆様からあり「木の家」を後にしました。

 

あかしあの里Ⅱ みんなで美味しいスイートポテト

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あかしあの里Ⅱでは、11月28日におやつ作りを実施しました。今回は、スイートポテトを皆さんで作っていただき、サツマイモをこねていただいたり、まるめていだだいて楽しそうに作成していました。以前にも、スイートポテトを作っていただいたことがあるので、皆さん手際よくスムーズに作っていました。形ができ、オーブンで焼いていると甘い匂いがしてきて「いい匂いがして早くたべたいね。」と笑顔が沢山見られました。完成したスイートポテトは、とても形もよくて、味の方も甘すぎずちょうどよい感じに仕上がっていました。手作りのおやつは、時間は掛かりますが、とても楽しくて美味しい物ができるので、今度はもう少し難しいものに挑戦していただきたいと思います。

 

春らんらん みんなで蒸しパン作り

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春らんらんでは、11月16日に蒸しパン作りを行いました。パン生地をカップ型に流し込み、お芋・チョコ・甘納豆を使って贅沢にトッピングを施し、それぞれにオリジナル蒸しパンの仕込みを完成させました。あとは、パン生地がふっくらと蒸しあがるのを待つだけです。出来上がった蒸しパンの味は格別だったようで、利用者の皆様も自分自身で作ったオリジナル蒸しパンをほおばりながら、普段よりも一段と会話が弾んでいらっしゃるようでした。

 

あかしあの里Ⅰ どんな絵になるかな?

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あかしあの里Ⅰでは、11月21日に催された日輪寺町の文化祭に作品を出品する為、入居者様とスタッフ共同作業で雪だるまの貼り絵作りを行いました。入居者様には松ぼっくりや綿、折り紙をのりで貼っていただいたのですが、手に貼り付いたり汚れたりと苦労しながらも最後まで綺麗に飾りつけを完成させて下さいました。出来上がった作品を見る皆様からは作り終えた充実した表情と楽しかったという声が聞かれました。今後も皆様と一緒に楽しく作品作りを行っていきたいと思います。

 

院長先生の健康豆知識

『サウナの中で』

先日久しぶりに、7・8年ぶりでしょうか。富士見温泉「ふれあい館」へ行きました。たまたま、用事の帰りに立ち寄ったのですが、夕刻の時間帯だったせいでしょうか、玄関に足を踏み入れた時、寂しい空気が感じられました。脱衣所に入っても、以前の混雑とはほど遠く、来ている人の多くは、近在の農家の方々で、ほとんどが顔見知りのようで、私の顔を見て、「こいつはどこの奴だ。見かけねぇ顔だな。」と、探りを入れる風でした。職業柄(?)か、男性達の肉体を、それとなく眺めていると、農家の人らしく、骨太の人が多いのですが、隠退したプロレスラーの様に(想像上ですが)、寄る年波で、昔、隆々としていたであろう、筋肉の衰えが目立ち、これからは俺の時代だとばかり、お腹の脂肪の勢いが感じられる人が、多く見受けられました。中には、お尻から足にかけてやせ細り、お腹だけが異様にふくらんだ、アフリカの栄養失調の子供の様(言い過ぎか!)な方もいました。サウナに入ると、そこは男の井戸端会議で、「おい、刑務所というのは、暖房が入っているのか?」

「そりゃ、日本の刑務所なら暖房位入っているだろう。」

「とすると、この寒い時に、三食、暖房付きじゃあ、居心地いいだんべ。お前ちょっと入ってきたらどうだ。」

「そりゃあいいかも知れんが、なかなか入ってるのは大変だぞ、ちょっとした事件じゃ、すぐ帰されっちまうからのー。」

「そうだ、そうだ」の大爆笑。

「ところで、塩ってのは身体に必要だんべ、俺なんか、こうして、毎日サウナで、ガンガン汗流してっから、沢山塩をとってんだ。みそ汁なんかも、思い切り塩辛くしてよお。」「そりゃあ、そうかも知れんのお。こんなに汗かいてんじゃ、たっぷり塩は出ている筈だもんのお。」話を聞いていた仲間の人達は、二人の意見に納得した風でした。

隅っこで汗を流していた私は、「塩を沢山とる」と、自慢気に話している人の身体を見ていました。太鼓腹と貧弱な下半身という、典型的なメタボ体型の方でした。70才を過ぎたであろうあの方の、脳梗塞や心臓病の危険性に思いが至り、恐ろしい話だなあ、と思いましたが、素っ裸の世界では、何ともしようがありません。

素っ裸の医者という事では、以前、こういう事がありました。「利久」という日帰り温泉で、ブクブク、泡の出る湯舟に浸っていた時の事です。目の前の、壁伝いにお湯が流れてくる場所に、気持ちよさそうに男性が寝そべっているのです。酔っぱらってるのだな、と見ていたのですが、それにしては、余りに動きが少なく、ひょっとして死んでる!と数分注意して見ていたら、モゾモゾ動き出したのですが、左半身が全く動いてないのです。脳の障害だ、と、あわてて外へ出て、若い男の係の人に、脳出血か梗塞で、倒れている人がいる、救急車が必要だ、と話したのですが、タオル一丁の変なおっさんが、妙な事を言ってるぞって感じで、全然あわててないのです。あわてて、私は医者なんです。こちらへ来て下さい、と言っても、やはり、怪訝な顔つきです。男の所へ案内し、マヒがあるでしょう。救急車を呼んで下さい。と言っても、横になっている男を眺め、上司に相談してきます、という始末です。素っ裸で、タオルで前を押さえながら、男の側にぽつんと立っている自分の滑稽な姿に、あきれていました。

閑話休題。サウナの中の話です。塩はとり過ぎていい事は、一つもありません。汗をかく時は沢山とっていいといいますが、それ程沢山とる必要はありません。人間の身体は、余分な塩を、汗で出すようにはできていません。塩を出すのは腎臓ですが、腎臓でも、余分な塩を都合よく出してくれる訳ではなく、できるだけ塩を貯めようと働きます。余分な塩を薄めようと、のどが乾くのです。そうして、塩をうすめようと、とられた水が、血圧上昇や浮腫(むくみ)につながるのです。日本人は、こうしたメカニズムの高血圧が多い人種です。サウナで一生懸命汗を流し、沢山塩をとってる人は、どんどん塩と水が身体に貯まり、血圧が高くなり、ついには、脳血管障害や心臓病を発症する事になります。ひょっとして湯舟で倒れていた人は、そんな生活習慣の方だったかも知れません。あらゆる臓器が、自然に衰えていく老衰の場合、塩を控え目に、というのは、確かな真実だと思います。

しかし、一般的に、井戸端会議の発言って、説得力があるようですね。沢山の医学的注意が、太鼓腹のおじいさんの発言一つで、翻ってしまう雰囲気でした。簡単に「オレオレ詐欺」にひっかかる人が多いのも、日頃から、しっかり自分の頭で考える習慣を、つけておかないからかも知れません。

 

吾輩はジータである
そしてまた貴方に恋している

東郷 彦四郎

第23章 『甲子園への道(Ⅲ)『運命のサイン』』

決勝で戦うこととなったM橋工業は、王者の風格すら漂うチームに成長し、決勝まで、危な気なく勝ち上がってきた。昨日の夜、監督から発表された、N大二高の先発メンバーには、寮生から七人が選ばれていた。今朝の朝食は、いつもと全く違っていた。いつもなら、全員での「いただきます」の唱和のあと、にぎやかな雑談が聞かれるのだが、みんな無言で、箸と食器が触れ合う音のみが聞かれ、その表情はこわばっていた。そんな異常な、ぎこちない朝食が終わり、キャプテン諸田が、「ごちそうさまでした」の音頭を取ろうとした時、リンさんが突然話し始めた。「これ、決勝戦まで来たら、渡そうと思ってたお守りなの。」ふたの開けられた箱の中には、色とりどりの布で作られた、小さなお守りが入っていた。「このお守りには、こんな時に使おうと思って、硫黄島から持ってきた砂が入っているの。あの人も一緒に戦えれば、どんなにか嬉しいと思って。そして、私からも、みんなの武運長久を祈っているわ。」と、お守りの入った箱を、諸田に渡した。諸田は真剣な目をリンさんに向けながら、「ブーン直球って、どういう意味ですか?」とたずねた。キャプテンの質問に、ほとんどの部員がうなずいていたが、一人だけ、笑い出したのがいた。野球部の中では、一番の優等生、補欠の大友加津夫(群女辺中学出身)である。「バカだなあ、ブーン直球ではなく、ブウンチョウキュウだ。運がついてますように、お祈りするっていう意味だ。」リンさんも笑いながら、「ブーン直球なんて、想像もしなかったわ。」と言うと、「やっぱり俺たち、バカだなあ。」という誰かの声に、全員大爆笑となった。

グラウンドに集合して、諸田が監督にお守りを差し出しながら、今朝の「直球」の話をして、笑いを誘ったが、監督は、表情を変え、みんなにこう話しかけた。「みんな、このお守りの中には、硫黄島の砂が入っているという。リンさんと、島で亡くなった人の思いがこもったお守りだ。みんな、この試合を、リンさんと、野球が大好きだった青年兵士にささげる試合にしようじゃないか。昔、私が旅行した時、その土地の人が、『亡くなった人達は、自分の影を雲の形でこの世に残すこともある』と言うのを、聞いた事がある。今日の試合、時々は雲を探してみろ。兵士の姿が見えるかも知れんぞ。」と、最後は、みんなをリラックスさせるように、笑顔を見せながら話した。突然、諸田がみんなの方を向いて話しかけた。「みんな知ってるよな。リンさんが毎日神社にお参りして、グラウンドに塩を盛っているのを…」諸田は言葉に詰った。最後はしぼり出すように、「この試合は、命がけで戦おう…」全員が、命がけという言葉に感電し、感涙にむせんだ。まさに、出陣にふさわしい光景となった。

戦いは、前橋対高崎対決という事もあり、球場は超満員、熱気にあふれていた。一塁側内野席に座ったリンさんは、スコアボードに書かれた選手達の名前を見た。一番伊藤宣明(ショート、足利中学出身)。荒谷佳奈子ちゃんという、同級生のアイドルに舞い上がり、監督に心配をかけた事があった。寮の食堂で、ぽつんと、「俺、顔もそれ程でないし、最近頭もうすくなってきたしなあ。」と、真面目な顔をして、ため息をつきながら、「おばさん、女の子と付き合うには、どうすればいいんですか?」と、聞いてきた事がある。そんな思いもかけない問いかけに、リンさんは、四十年以上も前、真一から貰った手紙の事を思い出していた。あの手紙の、どの言葉に魅かれて、自分は真一に会いに上野まで出かけたのか。古い古い記憶をたぐり寄せた。「そうねえ、『私の事をしっかり見て下さい。』という文句はどうかしら。」リンさんは、「私と会って、私という人物をしっかり確かめて下さい。」という、真一の言葉を思い出していた。そんな、先発メンバーにまつわる様々な思いに浸りながら、リンさんは、ふと、一塁側スタンドに陣取った、応援にまわった選手の一団に目をやった。何人かの選手は、一団を離れ、フェンスの金網をつかみながら、グラウンドに向かって、涙ぐみながら、叫びの声援を送っていた。ベンチに入れず、無念であろうと思うと、目頭が熱くなってきた。その中に、布施和也(榛東中学出身)が居た。リンさんは、布施が登録メンバーから外れた後も、寝る前、寮の外へ出て、バットを振る姿を見てきた。高校生活最後の夏、ベンチに入れないのが分かっていても、夜遅く迄バットを振る選手は、今迄見た事はなかった。リンさんは、何か暖かいものが、身体中に満ちてくる気がして、ある日、たまたま二人きりになった時、さり気なく話しかけた。「布施君えらいわねえ。夜の素振り、おばさん、知ってるわよ。ベンチに入れないのに、そんなに努力した子、おばさん見た事ないわ。どうしてそんなに頑張れるの?」布施は細い目を一層細くして、「メンバーから外れた時は、がっかりして落ち込みましたけど、ふと、こんながっかりしている姿を両親が見たら、悲しむだろうなと思ったんです。苦労しながら応援してくれる両親に、申し訳ない気がして。それに、一生懸命バットを振ってると、みんなの励ましにもなるんじゃないかと、何だか嬉しい気分になるんです。それから、おばさんはいつも言ってたじゃないですか。男の値打ちと言うのは、レギュラーになるかならないかで決まるんじゃなく、そこからどういう生きざまを見せるかだって。」試合はまだ始まってもいないというのに、必死で声援を送る布施の姿を見て、リンさんはもう涙を抑えるのが大変な程、感動していた。

一九八二年七月十五日、午後一時、前橋敷島球場。ウィーンと、近隣に鳴り響く、耳をつんざくようなサイレンと、サイレンの音に負けてたまるか、というような、「プレイボール!」という、主審の大きな声で、決勝戦が始まった。後攻の二高はエースの鎌塚ではなく横手投げの望月昭が先発であった。昨夜の鎌塚の様子で、S藤監督は、鎌塚の肩が悲鳴をあげていると感じていた。望月は草津中学では名の通った投手であったが、おっとりした性格が災いしてか、これまで出番はなかった。やはり一年から寮で生活してきた男である。リンさんは、頑張ってと心の中で叫んでいた。そんなリンさんの思いにも関わらず、望月は初回に早くも一点を失い、三、五回にもそれぞれ一点ずつ奪われたが、二高も原澤求(吉岡中学出身)のヒットなどで二回に二点、五回に一点を返し、五回まで、両者三対三の同点で折り返した。二高選手の形相は、まさに命がけと呼ぶにふさわしく、いつもベンチは総立ちで、動き回るボールを、全員で追いかけ、味方の攻勢の時には一球ごとに、全員の身体がビクッと動くほどであった。スタンドの応援もすさまじく、一球ストライクが入るごとに、相手を圧するような拍手が沸き起こり、点が入った時には、大根を持った応援団が、さっと通路に広がり、「青山ほーとり 常磐松 そびゆるタンクは我が母校、・・・それやり飛ばせー、吹き飛ばせー。」の合唱と共に、大根踊りが繰りひろげられた。

五回裏の攻撃が終わり、休憩時間になった時、鎌塚が叫んだ。「監督、行けます。肩はもう大丈夫です。」「よし、行け!」しかし鎌塚はやはり本調子ではなかった。代わりばなの六回に一点を取られ、四対三とリードされた。その後、二高、四対四と追いつくも、九回表に一点を入れられ、五対四と一点を追いかける立場で、九回裏の攻撃を迎えた。ベンチでうなだれ泣いている鎌塚にベンチ全員が声をかけた。「まだまだ終わったわけじゃないぞ。」九回裏の攻撃は、一番からであった。伊藤フォアボールで出塁、二番諸田サードゴロで二塁封殺。その後、三、四番とヒットが続き、五番古屋の場面で、監督が牧利和(子持中学出身)に向かって叫んだ。「代打だ!」監督はすでに代打で出る牧に、次は代打で出るぞと告げていた。そして、もし満塁になったら、「リンさんサインだ。」とも言っていたのである。この試合だけに用意した、監督奇策のサインだった。試合前のミーティングで特別なサインが打ち明けられた。「いいか。みんな、この試合はリンさんの運に賭けてみる。『リンさんサインだ』と俺が叫んだら、いつもリンさんが持っているバッグを見てみろ、バッグが膝の上にある時はバントで、横においてある時はヒッティングだ。」考えてもみなかったサインに、みんな驚き、次いで大爆笑が起こった。実は試合中みんな、ワクワクしながらそのサインを待っていたのである。ベンチの中から、一、三塁のコーチに「リンさんだ!」の声が飛んだ。バッターボックスに向かう牧と、二人のコーチは、さり気なくリンさんの方を見た。しかし、三人ともリンさんの姿は確認できたが、人が多すぎて、バッグはとても見られる状況ではなかった。三人は戸惑った風に、ベンチの監督の方を見た。監督は三人に手を振り払うような仕種を見せた。「自分たちで判断しろ!」というサインであった。

再度リンさんの方を見たとき、牧はすっくと立ち上がったリンさんが、両手でバッグを身体正面で持っているのを確認した。「ヒッティングだ。」と確信した。コーチ二人もリンさんを確認し、二人とも納得した風にニンマリと笑い、ベンチにいる選手は見えなかったが、走者、コーチ、バッターの思いは一致していた。バッターボックスに向かう牧に、リンさんの言葉が浮かんできた。「思いきりボールを打ち叩く本能のないバッターなんて、打席に立つ値打ちがないんじゃない?運命は自分で切り開くというのが、男じゃない?」

牧は、「来た!」と感じたボールを、思いきりぶっ叩こうと覚悟を決めた。そして、二球目、「来た!」というボールが来たのである。思いきり叩かれたボールは、左中間を抜け、二人のランナーが帰り、二高はサヨナラ勝ち。初の甲子園出場を決めた。

グラウンド上で、歓喜にむせび、誰彼となく抱き合っている選手達を見て、リンさんも立ち通しで拍手し、泣いていた。しばらくしてグラウンドでは、監督が宙に舞い、スタンドと一体となった大騒ぎの余韻を味わいながら、リンさんはハタと、我にかえった。これは大変な事になった。これからどんな準備をすればいいんだ、と、あわてて高崎へ戻った。リンさんが学校に着いた頃には、学校もてんやわんやの大騒動となっていた。大至急、学校の食堂で祝賀会の準備が始まり、リンさんも手伝った。準備が一段落した頃、選手たちを乗せた専用バスが、校内に着いた。たくさんの生徒や父兄、学校関係者が駆けつけていた。そうしたたくさんの人達の中を、監督を先頭に選手達が列を作って食堂へ向おうとする時、リンさんは、思わず選手達の列に歩み寄り、叫んだ。「みんな、監督を男にしてくれてありがとう。」ありがとう、ありがとう、と頭を下げるリンさんを選手全員が取り囲んだ。誰かが「胴上げだ!」と叫んだ。咄嗟に諸田が、リンさんの和服の裾をすっと巻きつけ、両足をつかみ、胴上げが始まった。リンさんは、「こんな風に空を見るなんて、なんて良い気分なんでしょう。」と感じながら、宙を舞っていた。

リンさん五十七歳、生涯最高の気分を味わった夏の出来事であった。

 

リハビリ便り

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田口宗之助さん・一子さんは夫婦で創春館を利用されています。宗之助さんは今年の五月に脳梗塞を発症され、口から食事が食べられない状態で病院を退院し、創春館に入所されました。

ご本人の頑張りで、食事もできるようになり、歩いてリハビリ室まで移動できるようになりました。

奥様の一子さんは週2回、火・木曜日に創春館に通い、ご主人が入所されてから一緒にリハビリに取り組まれています。時間を合わせてプランを実施して頂く事も多いのですが、お二人とも、リハビリをされている間は笑顔が絶えず、職員も暖かな気持ちを分けていただいています。

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辛いばかりがリハビリではないという事を、おしどり夫婦のお二人を見ているとつくづくと感じられます。

 

クリニック通所リハビリから、在宅生活を送りながら週3回、リハビリに通われている藤林秀夫様を紹介します。

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藤林さんは、脳出血を発症し、平成21年から通所リハビリを利用されています。利用中は、机上作業として、間違い探しや、計算問題にも積極的に取り組まれています。その中で、いい作品ができると、この「さんぽみち」にも文芸作品を投稿して下さいます。

以前、郵便局の局長をされていた藤林さんは、皆さんから親しみを込めて「局長」と呼ばれ、誕生日会では音頭をとってくれる等、ムードメーカー的な存在でもあります。最近は、右膝に痛みが出現し、立ちあがりも1人では困難でしたが、休まずにリハビリに通われ、現在は平行棒内を1人で歩くことができる、以前の状態に回復しました。写真は片手を離し、立位バランスの練習中の様子です。

今後の目標として「足に力をつけて、しっかり歩けるようになりたい」と話され、リハビリに励んで頂いています。これからも、スタッフ一同お手伝いをさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 

今月の行事予定

☆あかしあの里Ⅱ☆
11日 明月足湯ドライブ
26日 クリスマス&忘年会
未定  おやつ作り

 

☆GHしらさぎ☆
23日 クリスマス会
27日 餅つき

 

☆療養棟二階☆
12日 おやつ作り
19日 お誕生日会
26日 午前 餅つき
  午後 忘年会

 

☆あかしあの里Ⅰ☆
10日 たこ焼きパーテイ―
24日 クリスマス会

 

☆明月☆
25日 クリスマスイベント
28日 忘年会

 

☆涼風の家☆
 8日 お誕生日会
15日 GMW群馬
    慰問コンサート
22日 涼風の家 忘年会

 

☆春らんらん☆
25日 クリスマス会
    &お誕生日会
28日 もちつき大会

 

☆通所リハビリ☆
 8日 車椅子ダンス
11日 宝幼稚園のお遊戯会
13日 南橘リコーダーの会
17~19日 お誕生日会
22日 ヴィクトリー川田とブルーサウンズ
いくこフラサークルのクリスマスコンサート
29日 お疲れ様会

 

☆朱咲の家☆
 9日 出張指導
  『元気ひろげ体操』
16日 お誕生日会
23日 クリスマス会

 

☆わきあいあい☆
 1日 お誕生日会
22、25日 クリスマス会
27、28日 忘年会

 

☆星辰の家☆
12日 鍋パーティー
下旬 クリスマス会

 

☆療養棟三階☆
20日 おやつ作り
26日 療養棟もちつき大会
27日 日中:お誕生日会
  夕食時:忘年会

 

☆あかしあの里Ⅲ☆
13日 忘年会
20日 手作りおやつ
24日 クリスマス会
30日 大掃除
31日 大晦日&年越しそば

 

☆DSゆめさき☆
 5日 久保さんカラオケ
 6日、7日 上映会
 8日、13日、14日 お誕生日会
10日~12日 おやつ作り
17日~20日 大掃除
21日 晃峰会慰問
22日 餅つき
24日、25日 クリスマス会
26日、27日 しめなわ作り
28日、29日 忘年会

 

☆GHゆめさき☆
 6日 外食
16日 家族会・忘年会
23日 餅つき
25日 クリスマス会

 

文芸作品


畦道の 熟れた柿の実 頬張れば


   母に抱かれて 食べたあの味

原田 カヅヱ様

 


師走とは 云ひつつのんびり 過しけり


あといくつ 日数指折る 十二月


押しせまる 心忙しき 年の暮

増田 静江様

 


ふがいなさ 吾が夫に 頼られる


ため息を つきつつ一日の 暮れにけり


サンマにて 作らむ丑の 日のウナギ

今井 ミチエ様

 

良い事も あるかと思い 生きて行く

もう一度 ゆめに向って 健康で

菅野 邦夫様

 

人生は 自分を磨く 毎日だ

鈴木 福一様 

 

編集後記

今月号の特集の数々…いかがでしたか?秋は様々なイベントで盛り沢山ですね。皆様、紅葉狩りには出掛けましたか?秋の美味しい味覚は堪能されましたでしょうか?だんだんと厳しくなる寒さを吹き飛ばして、体調管理に気をつけて、残り少ない今年度を元気に過ごしていきましょう。元気が出ない時は、私の飛びきりの笑顔で力をつけて下さいね(笑)。来月号もさんぽみちを宜しくお願いします。

明月 下田 なつ美